切れるものが好きです。
ナイフ・包丁・頭。
小さいころ、何のためらいもなく一直線に切り裂く包丁に、
憧れと畏怖が入り交じった奇妙な感情を抱いていました。
自分もああいう風に、いろんなモノをスパッと一刀両断にしたい。



小さいころ靴のひもがうまく結べませんでした。
蝶々結びがうまくできなくて、私の靴にはいつも太くて不細工な芋虫がへばりついていました。
その芋虫がいやでいやで、どんなに足を振り回しても飛んでいかなくて、
その芋虫を見るたび、スパッと、きれいさっぱり切り離してしまいたい。そう思っていました。

ある日、
憧れの包丁が、私の足元にへばりつく芋虫を切り取ってくれました。
少しずつ広がる、鈍く紅い海の中を、芋虫はぷかぷか浮かんでいました。

今残る傷跡は、私にへばりついてどうあがいても離れてくれません。



今は包丁が危ないものだと知っているし、錆付いてるときはかえってゴチャゴチャにしてしまう事も知っています。
でも、時々、いろんなものをスパッと一刀両断にしてくれる包丁を求めてしまいます。